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‟本当はヤバい、子どもの日常。この映画には様々なアンチテーゼがこめられています”:映画『ふつうの子ども』(How Dare You?)呉美保監督インタビュー

  • 7 時間前
  • 読了時間: 9分

呉美保監督の話題作『ふつうの子ども』が、3月29日、「第20回アジアンポップアップシネマ」にて上映される。当日は呉監督をゲストに迎えてのトークセッションも開催される予定だ。


『ふつうの子ども』は、『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』の呉美保監督と脚本家・高田亮が三度めのタッグを組み、子ども同士のリアルな人間ドラマを描いた完全オリジナルストーリー。上映に先立ち、この作品に寄せる呉監督の想いをうかがった。



How Dare You?
上映日:3月29日 日曜日時間:14:30(開場は14:00)       上映館:AMC NEWCITY 14



『ふつうの子ども』(英語タイトル『How Dare You?』)

監督:呉美保

脚本:高田亮

出演:嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大、風間俊介、蒼井優ほか

公式サイト→https://kodomo-film.com/


● あらすじ

上田唯士(ゆいし)、10才、小学4年生。両親と三人家族、おなかが空いたらごはんを食べる、いたってふつうの男の子。最近、同じクラスの三宅心愛(ここあ)が気になっている。環境問題に高い意識を持ち、大人にも臆せず声を挙げる彼女に近づこうと頑張るが、心愛はクラスのちょっぴり問題児、橋本陽斗(はると)に惹かれている様子。そんな三人が始めた“環境活動“は、思わぬ方向に転がり出して――。

(引用:『ふつうの子ども』公式サイト:https://kodomo-film.com/)



● 上映情報

上映日:3月29日 日曜日時間:14:30(開場は14:00)

※呉美保監督によるトークセッシンあり

上映場所:AMC NEWCITY 14(1500 N Clybourn Ave c301, Chicago)


● APUC主催者の選評

幼い子役たち(しかもほぼ演技経験のない)の自然な演技に、深く感銘を受けた。呉美保監督が描く多様な子育てスタイルや育児へのアプローチにも心動かされる。子どもたちの愛らしい場面描写の一方で、「子どもの声に耳を傾け、真剣に向き合え」という、親に向けられた核心的なメッセージもしっかり伝わってくる。

― Sophia Wong Boccio

 


 

『ふつうの子ども』:呉美保監督インタビュー

How Dare You?
ⓒ 2025「ふつうの子ども」製作委員会
‟リアルの中の尖ったもの”を描きたい

―― 本作は子どもたちを主役とした完全オリジナルストーリーですが、きっかけは何だったのでしょうか?

 

グレタ(トゥンベリ)さんの、あの有名な「How Dare You!」のスピーチ(※)を見たプロデューサーが、「日本人の子どもたちはこのスピーチをどう思うだろう?」「日本でこういうことを言う子は現れるのだろうか」と感じたことがきっかけでした。そう言うことをやる子を描いたら、社会的テーマとエンターテイメントを併せ持つ、日本になかった子ども映画になりそうだと。脚本家の高田亮さんがジョインして企画が始まりました。特に、ショーン・ベイカー監督の『The Florida Project』(邦題:『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』)の、子どもたちのみずみずしさとダークな社会問題の表裏一体な描き方にインスパイアされました。

 

※スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリが、16歳のとき 2019年にニューヨークの国連本部で行われた「国連気候行動サミット」で、経済成長を優先し将来世代の声を無視している政治家たちに、「How dare you!(よくもそんなことを)」と怒りのスピーチを行った。

 

―― 監督は「ありそうでなかった子ども映画を作りたかった」とおっしゃっていますね。

 

日本で子ども向けの映画といえば、ディズニーやドラえもんのような“ファンタジー”が主流、もしくは登場する子がとても“お利口”ですよね。でもそれは10年間子育てをした私が日常的に見てきたものとは違う。目の前の子どもは半径1メートルの世界で生きていて、毎日がハプニングで何をしでかすかわからない。そんな“リアルの中の尖ったもの”を描きたいと思っていたときにこの映画のお話をいただいて、このフラストレーションをぶつけられると思いました(笑)。

 

 

How Dare You?
ⓒ 2025「ふつうの子ども」製作委員会

 チェコでは『Eko-rebelové』(直訳:エコの逆襲)

 

―― 今回シカゴ初上映となりますが、この映画はすでに世界各国でも上映されて高い評価を得ていますね。

 

世界最古の子ども向け映画祭である「ズリーン国際映画祭」(チェコ)や、ニューヨークのアジア映画祭、高雄映画祭(台湾)、香港のアジア映画祭のほか、ドイツでも上映していただきました。作品にこめられた子どもから大人へのアンチテーゼや、かつて大人が子どもだった頃の思いなど、エンターテイメントとしても楽しめつつ、実は普遍的なテーマを描いている点が評価いただけたのかなと思っています。

 

―― 海外向けの「How Dare You?」というタイトルは秀逸ですね。

日本でのタイトルも、もともと『はう・でぁ・ゆー』にする予定だったのですが、わかりにくいのでスタッフと話し合って「ふつうの子ども」にしました。そもそも“普通”ってあってないようなものだし、実はみんな普通でふつうじゃない。これ、いいねと。海外向けタイトルはすべて『How Dare You?』ですが、「ズリーン映画祭」では「Eko-rebelové」(直訳:エコの逆襲)というすごいプログラムタイトルがついていたんですよ(笑)。さすがエコの意識が高いヨーロッパだと感じました。

 

―― 国によってどんな反応の違いがありましたか?

 

ズリーンでは、英語字幕が読めない未就学児のために“弁士さん”がついてくれて、子どもたちは「僕のママはあんなんじゃない!」「このママはひどい」とかワイワイ大騒ぎで観ていました。ニューヨークの映画祭ではオーディエンスは大人がメインで、どちらかというとバイオレンスや尖った作品が毎年チョイスされるんです。『ふつうの子ども』にお声をかけていただいた理由を主催者に聞くと、「これは子どもが大人に立ち向かう逆襲バイオレンスよ」と言われて、なるほどなと思いました。また、母親の首の小さなタトゥーがアップになるシーンに「なぜあのシーンがあるのか?」と聞かれたのも新鮮でした。アメリカでは普通なので意味不明だったんでしょうね。

 

母親自身も、未熟なんです

―― 日本の子どもたちの反応はどうでしたか?                      

 

今までの映画でみたことのない、自分のすぐそばにある、日常だけどちょっとヤバイ世界だったので、手に汗握りながら見ていましたね。あとから「あなたのお母さんはどのタイプ?」と子どもたちに聞くと、ほぼ8~9割が「心愛のお母さん」と答えるんです(笑)。私自身は3人の母親(の要素)が全部あります。母親ならみんなそうじゃないかな。子ども相手だと感情のコントロールがきかなくなるし、理想的なきれいな子育てなんか無理。母親自身もここに至るまでの人生があったわけで、みんな未熟なんですよ。


 

How Dare You?
ⓒ 2025「ふつうの子ども」製作委員会

 

―― 監督にはおふたりの息子さんがいらっしゃいますが、どんな反応でしたか?

 

5歳の次男はリアルに入ってしまって、椅子から立ちあがって「ダメだよ!」って叫んでいました(笑)。10歳の長男は見終わった後に「何でこの続きがないの?」と。他の子どもたちにも「続きを作ってよ」と言われました。主人公たちのその後が心配になるみたいです。

 

―― 監督ご自身にお子さんがいなかったらこの映画は撮れなかったと思いますか。

 

絶対撮れなかった!ほぼ全てにおいて自分の育児経験や感覚を頼りにして撮っていましたから。2015年の『きみはいい子』という作品も、ちょうど長男が生まれたときでした。あれから10年たって、『ふつうの子ども』は今の自分にしか撮れない「アンサー映画」だったと思っています。

 

―― 映画を観ていて思わず子ども時代の“命がけのいたずら”を思い出しました(笑)。

 

みなさんおっしゃいます(笑) 今思えば大したことではないのに、「当時は生きるか死ぬかとヒリヒリとした感覚を思い出した」と言ってくださる方も多く、大人のためにも作ってよかったなと思います。

 


なるべく素人に近い子どもたちを集めた

―― 海外の映画祭も含めて子役が高い評価を得ています。映画の中心を担う子どもたちはどのように選んだのですか?

 

撮影半年以上前からいろんな子どもたちに会ってキャスティングをしていきました。いわゆる訓練されたキャリアを持つ子役ではなく、なるべく素人に近い子どもたちを集めて、オーディションというよりはワークショップというかたちで選びました。

主役の嶋田(鉄太)くんは、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(2024)の制作時に、主役の吉沢亮さんの幼少役のオーディションに来てくれたのですが、とにかく目を引く子でした。セリフ通りに言わずとも自分の言葉に咀嚼できていて、すごいなと。そのときは別の役をしてもらいましたが、ちょうど本作の本づくりを始めた頃だったので、もう一度オーディションに来てもらってやっぱりこの子だ、と。実際撮影に入っても、周りに臆することなくいい空気感を醸していました。

 

How Dare You?
ⓒ 2025「ふつうの子ども」製作委員会

―― 撮影で苦労したのはどんなところですか?

 

ほとんど演技経験のない子どもたちをまとめるのが大変でした。それも狙っての人選だったのですが、彼らには撮影をしているという感覚がないので途中でケンカが始まったりして。それをスタッフがなだめつつ撮影を進めました。それらの苦労もこうして映画祭で多くの方に見ていただけて全て報われました。

 

―― これからどういう映画を撮ってみたいですか?

 

ソーシャルなテーマはこれからも扱っていきたいと思っています。それから、ソーシャルテーマが根底に流れる派手な娯楽映画も撮ってみたいですね。たとえば、レオナルド・ディカプリオ主演の『ワン・バトル・アフター・アナザー』(原題:One Battle After Another)』のような、社会に対する皮肉がありつつものすごくエンターテイメントな作品を日本でも作ってみたいです。

 

―― 最後に今回シカゴでの上映を楽しみにしている皆さまに一言お願いします。

今回このような機会をいただけてとても光栄ですし、この映画を見つけてくださった奇跡に感謝しています。是非、文化の違いを楽しみながら観ていただけたらうれしいです。

お会いできることを楽しみにしています。

 


 

『ふつうの子ども』上映情報

上映日:3月29日 日曜日

時間:14:30(開場は14:00)

上映場所:AMC NEWCITY 14(1500 N Clybourn Ave c301, Chicago)

 


 


How Dare You?

監督:呉 美保(お みぽ)

1977年生まれ、三重県出身。スクリプターとして映画界入りし、初長編脚本『酒井家のしあわせ』で、サンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞、06年に同作で映画監督デビュー。『オカンの嫁入り』(10)で新藤兼人賞金賞を受賞。『そこのみにて光輝く』(14)でモントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門最優秀監督賞を受賞、併せて米国アカデミー賞国際⻑編映画賞日本代表に選出。『きみはいい子』(15)はモスクワ国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞。2児の出産を経て8年ぶりに映画復帰、脚本も手掛けた短編『私の一週間(「私たちの声」より)』(23)を監督。9年ぶりの長編作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24)が上海国際映画祭コンペティション部門に選出、国内外で高評価を得る。映画の他、執筆活動やCMも手掛けている。


In 2006, she directed her first feature-length film, "The Sakai's Happiness", won the Sundance / NHK International Filmmaker Award and screened various film festivals including the Busan International Film Festival. In 2010, "Here Comes the Bride, My Mom!", which screened at the Busan International Film Festival, A Window on Asian Cinema and won the Grand Prize of the Kaneto Shindo Awards. In 2014, "The Light Shines Only There" won the Best Director Award at the Montreal World Film Festival, World Competition. The film "Being Good" received the NETPAC Award at the 2015 Moscow International Film Festival, her latest film "Living in Two Worlds" has been nominated for the Golden Goblet Award Main Competition at the 2024 Shanghai International Film Festival.

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