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  • 執筆者の写真Chicago Samurai

『卓越した伝統:現代金属工芸における日本の技術』ー注目を集めた日本人金工作家3名の講演と実演。


来場者に作品の説明をする山田宗子 Hiroko Yamada (中央)

 5月21日から31日までシカゴ総領事館の広報文化センターで工芸展『卓越した伝統:現代金属工芸における日本の技術 Tradition of Excellence: Japanese Techniques in Contemporary Metal Arts 』が実施された。シカゴでは5月22日から25日まで北米アートメタル、ジュエリー協会 Society of North American Goldsmiths (SNAG) の設立50周年を記念する学会が開かれており、この機会に日本の優れた伝統技術を取り入れた金属工芸を紹介するためだ。


 展覧会を企画、監修したキュレーター2名はハイアート・ギャラリー HYART Gallery (ウィスコンシン州マディソン市) のオーナーで自身も金属工芸作家の山田宗子 Hiroko Yamada とペンランド・ギャラリー Penland Gallery (ノースカロライナ州ペンランド美術学校) のディレクター、キャスリン・グレムリー Kathryn Gremley 。この展覧会は10月1日から11月17日までペンランドで開かれる予定で、今回はそのプレビューとなった。


 会場では30点以上が展示されており、日本工芸会の正会員も兼ねる日本の名匠とアメリカの工芸作家による現代的で美しい作品が並んだ。大角幸枝、玉川宣夫、桂盛仁は人間国宝だ。セス・ゴールドは日本で学んだ経験を持つ。



(左)玉川宣夫の作品  Vase by Yoshio Tamagawa (右)セス・ゴールドの作品  Container by Seth Gould


 会期中、特に注目を集めたのは作品を展示中の3名のアーティスト (岩田広己、田口史樹、小嶋崇嗣) が5月23日に行った講演と実演だった。岩田は東京藝術大学 (藝大) 工芸科の准教授であり、田口と小嶋は神戸芸術工科大学で教鞭を取っている。


左)田口史樹 Fumiki Taguchi

(右)田口史樹 ブローチ 『白の表情』

Brooch "White Expression" by Fumiki Taguchi


田口の制作する銀のコンテンポラリージュエリーは植物を連想させる複雑な形だ。手描きのデザインをもとに銀の表面を根気よく彫り、まるで石留めをしたかのような輝きを与える。ひとつの作品が完成するまで約2ヶ月間、1日に6時間ほど作業するという。



(左)小嶋崇嗣 Takashi Kojima(右)小嶋崇嗣 ネックレス 『Point_obj_SPIN』Necklace "Point_obj_SPIN" by Takashi Kojima


小嶋のジュエリーは幾何学的で、宝石と銀が独特のバランスを維持している。糊を一切使わず、テンションを計算した結果である。


(左)日本の技巧を実演する岩田 Iwata demonstrating Japanese techniques

(右) 岩田広己 花器 『Blue & Dewdrop 1』『Blue & Dewdrop 2』

Vases "Blue & Dewdrop 1" and "Blue & Dewdrop 2" by Hiroki Iwata

岩田は講演で、アジアで初めて近代的な高等美術教育機関となった藝大の歴史に触れ、美術表現には高い技術が求められることを説明した。岩田は都会での日常生活で目にする植物からインスピレーションを受け、金属に七宝を施した穏やかな作品を発表している。


 講演の後は田口が銀の和彫りを実演。上下左右、方向を変え、道具を変えて銀に加工を施した。岩田は真鍮板の表面に鏨 (だがね) で目切りをし、そこに桜の花の形の銀箔をはめ込む布目象嵌 (ぬのめぞうがん) の技術を披露した。この象嵌は参加者も試すことができ、多くの

人が岩田を囲み、指導を受けていた。


岩田の実演を眺める参加者 Participants watching Iwata's demonstration

 展覧会を企画した山田は「アメリカでは日本の伝統工芸というと陶芸ばかり注目されますが、現代の日本の金属工芸は政 (まつりごと) の奉納品、刀の装飾、茶道、華道、香道などの道具作りから発展し、確かな技術に和の感性が合わさったものです。この機会に多くの人に優れた日本の金工を知っていただければ」と語っていた。



<出品作家(アルファベット順) Exhibiting Artists (alphabetical order) >

Seisei Asai 浅井盛征, Kiyoko Fujie 藤江聖公, Sawyer George ソーヤー・ジョージ, Seth Gould セス・ゴールド, Noriko Hagino 萩野紀子, Hiroki Iwata 岩田広己, Marvin Jensen マービン・ジェンセン, Kazuo Kashima 鹿島和生, Morihito Katsura 桂盛仁, Takashi Kojima 小嶋崇嗣, Andrew Meers アンドリュー・ミーアス, Haruo Mitsuata 満田晴穂, Hiroshi Nishikata 西方浩, Ryota Nishikata 西方亮太, Yuko Okahara 岡原有子, Masako Onodera マサコ・オノデラ, Motoko Oshiyama 押山元子, Yukie Osumi 大角幸枝 , Hiroko Sato Pijanowsi ヒロコ・サトウ・ピジャノスキ, Ryohei Sako 佐故龍平, Makoto Susa 須佐真, Fumiki Taguchi 田口史樹, Maki Takehana 竹花万貴, Emiko Takenouchi 竹之内恵美子, Norio Tamagawa 玉川宣夫 , Tatsushi Tamagawa 玉川達史, Yoshio Ueno 上野彬郎, Mizuko Yamada 山田瑞子


北米アートメタル、ジュエリー協会

Society of North American Goldsmiths (SNAG)


日本工芸会 

Japan Kogei Association


ハイアート・ギャラリー

HYART Gallery


ペンランド・ギャラリー

Penland Gallery

Penland School of Craft

"Tradition of Excellence: Japanese Techniques in Contemporary Metal Arts"

October 1 - November 17, 2019





(文責:斉藤博子 Text by Hiroko Saito)



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